脱毛についてお答えします

  

男性の脱毛症で多いのは、壮年性脱毛症といって、青年期から壮年期にかけて髪が薄くなっていく症状です。日本男児では、残念ながら禿げている人が様になっている場合は少ないので、育毛剤などが飛ぶように売れています。

さて、その壮年性脱毛症。有効な対策はあるのでしょうか。この点に関しては、現在のところ、悲観的にならざるを得ません。なぜでしょうか。それは、壮年性脱毛症の原因が、先天的なところにあるからです。すなわち、特に男性に見られる壮年性脱毛症は、遺伝が原因とされているのです。また、男性ホルモンの分泌過剰が、男性の髪を薄くする原因ですが、この男性ホルモンの分泌の多少も実は遺伝に制御されています。従って、頭の薄い家系ならば、基本的にはあきらめながら、できるだけのことをしていく、というのが、取るべき正しい態度でしょう。

そこで、この「できるだけのこと」というのは、どのようなことを指すのでしょうか。それは、自分に合った育毛剤を根気よく続けるか、フィナステライドのような、男性ホルモンを抑制する作用のある薬を利用することです。

このような悲観的状況を打破するような画期的な予防法が発明されない限り、男性諸君は、美しく禿げるにはどうするかという点に気を使うべきでしょう。そして、そのためには、心身錬磨し、洗練された身のこなし、正しい姿勢、薄い髪と調和したファッションの勉強が是非とも必要になることは言うまでもありません。  

脱毛方法は数多くありますが、いずれの脱毛方法にもそれぞれ長所と短所があります。中でも、危険性があるかどうか、高価であるかどうか、簡便かどうか、効果があるかどうかという点に関しては、脱毛方法を選択する際の重要な判断基準となるでしょう。これらの基準に関して、ほぼクリアしているとみられる脱毛方法が、糸脱毛という脱毛方法です。

糸脱毛という脱毛方法は、特殊な糸に毛を絡めて抜く方法で、コイルに巻き取る感覚で毛を抜いていくので、皮膚への負担が少なくて済みます。また、糸によるマッサージ効果や老化した角質層を除去する効果もあるとされています。また、複数の糸を駆使することで、太い毛だけでなく、産毛までも毛根からきれいに脱毛できることから人気を呼んでいます。

糸脱毛は中国や台湾などでもみられるようですが、これらの国で行われている糸脱毛は、引き抜くという方法が主流のようで、かなりの痛みが伴うようです。これに比べると、日本式の糸脱毛方法は、痛みが少ない点では優秀だといえるでしょう。

糸は太いもの、中程度の太さのもの、細いものを使い分けて、堅い毛や柔らかい毛、太い毛や細い毛まであらゆる毛に対応します。ただし、糸脱毛は、毛の発育起点である毛母細胞のある毛根を根こそぎ脱毛していきますが、毛母細胞を産生する幹細胞には影響を与えないため、脱毛といってもレーザー処理などには劣ります。ただし、レーザー法では処理しきれない産毛の除去ができることから、完全脱毛を考える場合には、併用方法の一つとして糸脱毛法を考えてみるのもいいかもしれません。  

特に女性にとって、手足などの露出度の大きい部分では、毛が気になるものです。人間にとっての毛の機能的役割がほぼ終了していることを考慮に入れると、首から下の毛は、いわゆる「ムダ毛」と考えてもよいかもしれません。

ところで、この「ムダ毛」を、自宅でだれでも簡単に処理できるものに、脱毛剤があります。脱毛剤は、脱毛の仕方の違いで、狭義の脱毛剤の他に、徐毛剤および抑毛剤があります。狭義の脱毛剤は、毛の生育起点の毛母細胞のある毛根から脱毛します。これに対して、徐毛剤は、毛根の部分はそのままにして、毛の見えている部分だけを脱毛します。さらに、抑毛剤は、毛の生育を抑えることで、毛自体が薄く、細くなることで、毛の存在を目立たせないようにします。毛根から断つ脱毛方法である狭義の脱毛剤に比べると、毛根を残すため毛がすぐに生えてくる点で徐毛剤は、また、効果に時間を要し、かつ、見た目に効果が実感しにくい抑毛剤は、不完全な脱毛方法といえるでしょう。ただし、確かに毛の生育起点は毛根の毛母細胞ですが、この毛母細胞を除去しても、毛母細胞を作る幹細胞を除去しない限り、狭義の脱毛剤を使っても、いずれは毛が生えてくることになります。毛母細胞を作る幹細胞の除去は、医療機関やエステサロンで本格的な処理をする必要があります。

徐毛剤には脱毛クリームや脱毛テープがありますが、アルカリ剤を使って毛自体を溶かしていく抑毛剤同様、皮膚表面を痛め易い欠点を持っています。  

脱毛方法には多種類のものがあります。これを大きく分類すると、医療機関でしか処理できないもの、エステサロンで利用されているもの、医療機関及びエステサロンで行われているもの、自己処理できるもの、に分けられます。以下、この分類ごとに脱毛方法を見ていきたいと思います。まず医療機関でしかできない脱毛方法からです。
①絶縁脱毛
針脱毛法の一つで、絶縁針という特殊の針を使います。
②医療レーザー脱毛
レーザーを使った脱毛方法で、レーザーの種類でさらに各種レーザー処理法に分かれます。

次にエステサロンで使われている脱毛方法を見ましょう。
①ニードル
針脱毛法の一つで、ニードルという特殊な針で脱毛を行います。
②フラッシュ
拡散光を発する機器を使った脱毛方法です。
③プラズマ
特殊な光線と特殊偏光フィルムを使った脱毛方法です。

医療機関及びエステサロンで使われているものには以下のものがあります。
①電気脱毛
針脱毛法の一つで、特殊な針を使った脱毛方法です。
②光
特殊な光を発する機器を使った脱毛方法です。
③IPL
IPLという特殊な光を発する機器を使った脱毛方法です。

最後に、自宅でできる脱毛方法を紹介しましょう。脱毛用の特殊なワックスを使った簡便な方法です。これは、エステサロンでも使われています。

以上のように、脱毛方法には、主として、針に電気を通して１本１本処理していく割高だが確実な針脱毛方法、短時間のレーザー処理による割安だが処理残しが発生しうるレーザーによる脱毛方法、光処理で脱毛する光脱毛方法、そして薬品で脱毛する方法があります。  

ひげは男性の身だしなみといわれた時代はもはや過去となり、今は巷でひげの永久脱毛をする男性も珍しくなくなってきています。

ひげの永久脱毛の施術方法には、針による脱毛法と医療レーザー脱毛法があります。

針脱毛法の長所は、ひげ1本単位で処理するため、確実にひげ脱毛処理ができる点です。しかし、その反面、ひげの脱毛処理時間がかなりかかります。また、１本１本毛穴に電気を流してひげ脱毛を行うため、痛みが伴います。さらに、治療代が高額です。

他方、医療レーザー脱毛法は、短時間でかつ痛みを伴いません。また、針脱毛法に比較して安価です。しかし、反面で、レーザーの波長がメラニン色素に反応するため、白ひげは脱毛処理できません。また、同様に、メラニン色素の薄い産毛も脱毛処理がしにくい。

そこで、ひげ脱毛を完全に処理したい場合には、両者を併用します。すなわち、医療レーザー脱毛でほぼひげの脱毛処理をやってしまい、残毛処理を針脱毛法で行うのです。なお、医療レーザー脱毛法を使う場合は、１回だけの処理ではなく複数回必要となります。通常は５回程度通院することで、完了するようです。余談ですが、レーザー脱毛の場合は、ひげの全脱毛ではなく、ひげのデザインを考えた処理ができます。町行く男性の中に妙にひげが浮き立つ人を見たことはありませんか。もしかしたら、その人は医療レーザー脱毛でデザインしたのかもしれません。  

頭部の一部が何だか抜け毛がひどく、その辺りの毛髪を軽く引っ張ると束になって抜ける。鏡に映すと、10円玉大の円形の脱毛状態になっている。ぎょっととして、何度見返す。円形脱毛症になった時の人の反応は、さまざまです。ただ発見当初の反応は上記のようなものでしょう。

円形脱毛症の多くはストレス由来のものです。そして、ストレス由来のものは、通常、6ヵ月程度で自然治癒します。円形脱毛症は年齢を問わず発症しますが、好発年齢層として、10歳以下と20歳〜30歳代が比較的多いようです。男女ではやや女性の方に多く発症しています。

円形脱毛症の原因としては、遺伝、精神的なストレス、ホルモン系の障害、免疫系の障害などが上げられます。このうち、精神的ストレス由来の免疫障害が発症原因では最も多いようです。すなわち、免疫は自己と非自己を見分け、非自己を排除する、われわれの体に用意された生体防御機能ですが、その機能障害で、頭部の一部が非自己とされ免疫的な攻撃にさらされるのです。これを自己免疫疾患と呼んでいます。

治療薬には、市販品に多い、収縮した血管を拡張するフロジン液や、初期にはステロイド薬を使用します。また、専門的療法としては、冷凍療法といって、患部にドライアイスを１秒程度当てるもの、ある種の化学薬品で患部に軽い皮膚炎を起こさせる局所免疫療法、ソラレンという薬品を内服ないし塗布し、紫外線を当てるPUVA療法、抗アレルギー、血流促進の効果があるセファランチンを内服処方する療法などがあります。  

外部のあらゆる刺激は人間にとってストレスとなりえます。これらのストレスに対して、人間の神経系は機敏に反応し、ホルモンをコントロールすることで、ストレスに対処しようとします。また、精神的な刺激もストレスとして上記の反応を起こす原因となります。

適度なストレスは人間の恒常性維持機能をバランスよく発動させる刺激となりますが、強度なストレスはノルアドレナリンの分泌を促進し、交感神経の稼働を常態化させる恐れを持っています。こうなると、常に体内は緊張状態が続くことになります。緊張状態の体内反応としては、アドレナリンの作用で末端部分の体内毛細血管が収縮してそれより先の組織や細胞に栄養や酸素が行き渡りなくくなります。こうして、脱毛が発生し、助長されていくことになるのです。

他方、ストレスによる交感神経の持続的な緊張状態は脳下垂体経由のホルモン系に影響を与えます。中でも、毛髪の生成に関わりの深い甲状腺から分泌される成長ホルモン、副腎皮質から分泌されるコルチゾール、卵巣から分泌されるエストロゲンの減少は、毛母細胞の細胞分裂を低下させます。つまり、毛髪の生育を阻害するのです。さらに、表皮の下にあって、皮膚に弾力性をもたらす役割を持つ、真皮組織中のフィブロブラストという繊維細胞の増殖を阻害します。頭皮に弾力がなくなり、つまり頭皮が薄くなり、毛髪が抜けやすくなる素地を作ることになります。

いずれにしてもストレスは脱毛原因の筆頭に上げられるものとして、日頃からストレス管理を積極的に行っていきたいものです。  

現在、皮膚科やエステサロンでは、主にアレクサンドライトレーザー脱毛機かダイオードレーザー脱毛機が使われています。それは、永久脱毛に欠かせない毛包部を、周辺部にある他の組織を傷めないで処理することができるからです。

ここで、主要なレーザー脱毛機を上げて、その特徴を概観しておきましょう。

①ルビーレーザー脱毛機
毛包部にはメラニンがあり、そのメラニンとだけ反応しやすい波長を持つレーザーを使えば他の組織に障害を与えなくてすみます。この点では、ルビーレーザーが最も適しています。しかし、メラニンが多い人種の場合、表皮のメラニンにも反応してやけどを起こす場合があります。ですから、表皮にメラニンが少ない白色人種に向いています。

②アレクサンドライトレーザー脱毛機
ルビーレーザーがメラニンに反応しやす過ぎることから、それよりやや低めの反応を示すこのレーザーが主流になっています。

③ダイオードレーザー脱毛機
アレクサンドライトレーザーと同様よく利用されています。接触型の冷却装置を備えることで安全性が高い脱毛機です。レーザーの性質自体はアレクサンドライトレーザーに似ています。

④ヤグレーザー脱毛機
上記3つのレーザーと比べて、波長が長く、メラニンに対する反応は鈍い。その点では、メラニンの多い黄色人種などには安全性が高いが、反面で効果のほどは未知数です。  

1999年、アメリカのFDAが一部のレーザー脱毛機対して認可を与えました。これで、レーザー脱毛の安全性にお墨付きが出たことになり、その後のレーザー脱毛の世界的波及に勢いがつくことになります。

レーザー脱毛には２つのレーザー、アレクサンドライトレーザーとダイオードレーザーが使われています。これらのレーザーは、波長が毛包部のメラニンにだけ反応しやすい特徴を持っているため、レーザー照射による他の組織の侵襲が少なくてすみます。また、レーザー脱毛は、他の脱毛に比べて、短時間で処理可能で、感染などの恐れがない点でも優れた脱毛法です。しかし、適応部位や体毛の種類に制限がある上、レーザーの出力や適応部位を間違うと、火傷やシミになる場合があります。特にエステにおけるトラブルが目立っています。レーザー脱毛は皮膚科で行ってもらうべきです。

レーザー脱毛の実際の流れは、目を保護するためゴーグルをつけ、照射部位の毛を剃ります。1000分の数秒という極めて短時間の照射が行われるとともに、冷却が行われます。冷却法は部位にジェルを塗布する方法と冷却装置を押し当てながら照射を行う方法があります。

レーザー脱毛の原理は、アレクサンドライトやダイオードなどのレーザーは毛のメラニンや表皮のメラニンに吸収される。吸収されると熱エネルギーに変化し、この熱で毛包部を破壊することで永久脱毛が可能になるのです。この時、他の組織には吸収されないので、熱による組織破壊は生じません。  

正常な毛の発育ないしその周期に異常を来す疾患を脱毛症といいます。脱毛症の原因となるものには、ホルモンのアンバランス、精神的ストレス、栄養障害、その他のさまざまな疾患があります。女性に特有の脱毛症としては、分娩後脱毛症や過激なダイエットによる栄養障害が原因の脱毛症があります。

毛は一定の周期で抜けかわります。毛の根元の先端にある毛母細胞（及び毛乳頭）が毛を作り出すもとです。この毛母細胞は、成長期と休止期を繰り返します。脱毛症は、上記のさまざまな原因で生じますが、その場合、この毛母細胞に原因がある場合とこの毛母細胞を作り出す幹細胞が原因となっている場合があります。毛母細胞は人工的に切除されても毛が生えてくることから、以前から毛母細胞を作る大元の細胞があるとされてきましたが、それが幹細胞です。そして、上記の疾患などが原因で、成長期にある毛母細胞が死滅するか、もしくは幹細胞が死滅するのです。この場合、毛母細胞だけが死滅した脱毛症なら問題はありません。幹細胞によって早晩細胞が復活してくるからです。しかし、幹細胞が死滅した場合には当該部位には永久に毛が生えてきません。それが、同じ脱毛症でも、治療がうまくいって毛が復活してくる人と復活してこない人がいる原因だと思われます。

同じ毛でも、脱毛症でなくなった毛を何とか育毛したいと必死になる人と、「ムダ毛」処理に熱を上げる人がいます。毛は人にとっての大切な見た目を構成する付属品なのです。